ファイナル256というのは、日能研で実施される模試です。
正式名称は、「合格力完成テスト・ファイナル256」ですね。
その名が表すように、最後の模試として、年末年始に6年生を対象として実施されます。
年末年始に実施される模試は貴重なので、日能研生以外も受験を検討する方が多い模試です。
しかし、ファイナル256は何度も実施される模試ではないので、情報が少ないです。
また、名称も独特ですし、どのような模試だか分からないという方もいらっしゃるでしょう。
日能研生であっても、どんな模試かよく分からないまま受験することもあります。
外部生なら、なおさら情報が不足していますよね。
情報が不足していても、ファイナル256が一般的な模試と大きな差のない模試なら問題ありません。
ところが、ファイナル256は、以下のように一般的な模試と大きく異なる特徴があります。
- 問題のパターンを選べる(256パターン)
- 偏差値が出ない
- 出題範囲が限定されている
せっかく受験したにもかかわらず、「受けなければよかった」と期待外れに終わってしまうこともあります。
ファイナル256とはどのような模試か、受験することのメリットとデメリットを整理します。
そのうえで、どのような方には受験をお勧めし、どのような方には受験をお勧めしないという、私なりの考えをまとめます。
受験するか検討される際の参考にしていただければ幸いです。
この記事の主な対象
- 「ファイナル256って何?」という方
- 「年末年始は模試があまり無いから、とりあえずファイナル25というのを申し込んでおくか」という方
- 「過去問を解く時間も欲しいし、ファイナル256を受験するか迷っている…」という方
ファイナル256とは
ファイナル256は、6年生だけを対象として年末年始の頃に3回だけ行われる、日能研の最後の模試です。
主な特徴をまとめると、以下のようになります。
- 問題のパターンを選べる(256パターン)
- 偏差値が出ない
- 出題範囲が限定されている
順に説明していきます。
ファイナル256の、「256」というのは、問題のパターンが256通りあるということです。
科目ごとにA~Dの4パターンがあります。
パターン 国語 算数 社会 理科 A 記述重視型 大設問重視型 文章選択・記述重視型 実験・考察型(高難度) B バランス型(高難度) バランス型(高難度) 用語記入・文章選択重視型 知識・技術型(高難度) C バランス型(中難度) バランス型(中難度) 用語記入・記述重視型 知識・技術型(中難度) D 選択肢重視型 計算・一行題重視型 用語記入・用語選択重視型 実験・考察型(中難度)
4科目ありますから、4×4×4×4=256で、256パターンの出題があるということです。
A~Dのパターンは、記述が多いか少ないか、一行問題が多いか文章題が多いか、などで区別されています。
出題内容に大きな差はありませんが、特に形式面に差があるということですね。
256パターンがあるとはいえ、「国語はBパターン、算数はCパターン」というように、一つ一つのパターンを自由に選べるわけではありません。
受験をする際に、志望校を一つ選択します。
志望校の入試問題の傾向に合わせて、日能研が予めパターンを決めています。
例えば、「○○中学なら国語A算数C社会B理科B」などと決まっています。
志望校を選ぶことによって、自動的にパターンも決まります。
256通りから選ぶのではなく、あくまで理論上256パターンがあり得るということですね。
「A~Dのどれにしようか」と悩む必要はありませんので、ご安心ください。
模試を受験する際は、偏差値が算出されて、合格への距離などを判断するのが一般的です。
しかし、ファイナル256では、偏差値が算出されません。
問題が256パターンもあるので、パターンによって受験者数がバラバラになるんですよね。
パターンによっては人数が少ない場合もあります。
全体の中での位置づけを判断することができないので、偏差値は算出しないのでしょう。
問題ごとの正答率や平均点は算出されるので、復習がしにくいということはありません。
しかし、合格判定などもないシンプルな成績表が返却されるので、注意が必要です。
小6の秋以降の模試は、出題範囲が限定されず、何が出るか分からないのが一般的ですよね。
入試が近づいてくる時期ですし、入試も何が出るか分からないので、より実践モードということですね。
しかし、ファイナル256は、その流れと逆行するように、最後の模試なのに範囲が限定されます。
国語 算数 社会 理科 第1回 物語・韻文・知識系語句 数論 地理 生物・電気 第2回 説明文・漢字系語句 図形 歴史 地学・力学 第3回 随筆・文法系語句 文章題 政治・世界 化学・音・光・熱
例えば、社会であれば、地理分野が出題される回、歴史分野だけが出題される回、公民分野だけが出題される回があります。
全3回の模試のそれぞれに範囲の指定があり、3回をすべて受験することで全分野を網羅することができます。
また、1回のテストの時間は、国語と算数が40分と短めです。
ファイナル256を受験するメリット
ファイナル256を受験することには、主に以下のメリットがあります。
- 他の塾でテストがない時期
- 範囲の指定
- 志望校に近い形式
- ファイナルシート
順に説明していきます。
例年、年末年始になると、中学受験に向けた模試はあまり実施されません。
サピックスのサピックスオープンや、四谷大塚の合不合判定テスト、首都圏模試の合判模試、これらはいずれも12月上旬~中旬に実施されるのが最後です。
入試まで、テストのない期間が長く続いてしまうと、リズムを作りにくい面があります。
年末年始にテストを受けることでリズムを作るという点では、ファイナル256を受験するメリットは大きいです。
ファイナル256では、出題範囲が限定されています。
入試が近い時期に、範囲が指定されている模試は珍しいですよね。
もちろん範囲の指定がない模試もメリットが大きいのですが、範囲指定があるからこそのメリットもあります。
分野別に模試を受験することで、効率的に弱点を補うことができます。
得意分野や苦手分野などの偏りの有無を、数字で客観的に確認し、それを前提に直前期の戦略を考えることもできます。
ファイナル256では、問題が256パターンあります。
志望校を登録することで、志望校の入試問題に近いパターンが選ばれます。
志望校に近い形式で、力試しをすることができるというのは、本番が近づいた時期には大きなメリットです。
とはいえ、注意点があります。
実際の入試では、一つの学校だけを受験する人は少なく、複数の学校を併願するのが一般的ですよね。
ファイナル256では、基本的には第一志望校に似た形式の問題で受験することになります。
併願する学校の出題傾向が似ている場合は良いのですが、形式が大きく異なる場合もありますよね。
併願する学校の出題形式が大きく異なる場合は、問題形式を選べることのメリットは小さくなります。
テストが終わったらファイナルシートという、問題を集めたシートがもらえるので弱点を補うことができます。
ただ多数の問題が配られるだけではなく、テストの結果を受けて、特に復習した方が良い問題の番号も見ることができます。
テストに出題された範囲の中から、特に苦手な分野から問題を選んでくれるので、効率よく復習することができます。
ファイナル256を受験するデメリット
ファイナル256を受験することには、主に以下のデメリットがあります。
- 範囲の指定
- 他の受験者との比較がしにくい
- 勉強時間が奪われる
- 出題形式が偏る
順に説明していきます。
範囲が指定されていることは、メリットでも述べました。
分野別に弱点を発見するという点ではメリットになるのですが、全体の力を判断しようという場合には、デメリットになります。
もちろん入試ではの本番では、基本的に何が出題されるか分かりません。
入試が近い時期に範囲が指定されていることは、人によっては気になるデメリットになるでしょう。
ファイナル256は、出題形式を選ぶことができるので、受験者数が形式ごとにバラバラになります。
同じ科目でも、Aパターンでは受験者数が4桁とDパターンでは受験者数が2桁、ということもあります。
受験者数がバラバラということもあり、偏差値が算出されません。
また、平均点や正答率は算出されますが、AパターンならAパターンを受けた人の中での比較しかすることができません。
他の受験生との比較という使い方はしにくい、というのは一つのデメリットにはなります。
しかし、実際の入試では、その学校を受験した人の中での比較だけが重要なので、人によっては大きなデメリットとは感じないでしょう。
模試を受験するということは、半日の時間を使うということです。
解き直しの時間も含めると、大きな時間を使うことになります。
しかも、3回で全範囲を網羅する模試なので、基本的には3回すべて受験することになります。
少しだけ時間を作って受験する、という使い方はしにくいです。
年末年始は、塾の授業などもハードな日程ということも多いですよね。
過去問演習などの他の勉強にかける時間が減ってしまうというのはデメリットです。
志望校の出題形式に近い形式の模試を受験することができるのは、メリットでも述べました。
しかし、志望校の出題形式ばかりに偏った勉強をしてしまうのは、デメリットにもなります。
特に、受験校を迷っている場合は注意が必要です。
また、併願校の問題形式が大きく異なる場合も、注意が必要です。
様々な形式に対応する力を養うために、3回をバラバラで受験することもできます。
しかし、3回で全ての範囲を網羅するので、3回とも共通のパターンで受けることが効果的だと考えます。
実際の入試では、様々な形式に対応することが求められることが多いので、人によってはデメリットを大きく感じるでしょう。
ファイナル256はこんな人にお勧めします
ファイナル256の受験をお勧めするのは、以下に当てはまる方です。
- 分野別に穴を探したい
- 受験までのペースメーカーにしたい
- 併願校や受験を迷っている学校の出題形式が第一志望と似ている
順に説明していきます。
ファイナル256は、出題範囲が限定されています。
正答率の高い問題を落とす分野もあれば、きっちり得点できる分野などもあるでしょう。
通常の模試であれば、一つの分野から出題される問題数は限られていますよね。
例えば、1回の模試に地理の問題が10問出題されていて、そのうちの間違えた問題となると、1回の模試で見つかる穴は限られてきます。
ところが、ファイナル256は、1回の模試が全て地理から出題されることになるので、地理の穴を1回で多く探すことができます。
数多くの問題で、分野別に、得意・苦手を効率的に把握するという使い方はお勧めできます。
ファイナル256は、模試の少ない年末年始に行われるので、入試に向けてリズムを作っていくという目的で使うことが効果的です。
加えて、出題範囲が限定されているからこそ、ペースメーカーとして使いやすい面もあります。
例えば、1回目のテストに合わせて1回目の範囲を『算数ベストチェック』という教材などで学習するという方法があります。
そして、2回目に合わせて2回目の範囲を勉強する、というように進めるとペースが作りやすいです。
ちなみに、算数ベストチェックの使い方はこちらをご覧ください。
出題形式を選ぶことは、場合によってはデメリットとなることも述べました。
しかし、併願校や受験を迷っている学校の出題形式が、第一志望の学校と似ている場合は、このデメリットが気にならなくなります。
むしろ、1回のテストで複数の学校の対策をすることできるので、とても効率が良くなります。
とはいっても、出題形式が似ているかどうかなんて、判断が難しいですよね。
ご安心ください。
受験に際し、「○○中学はABCAパターン」などと、日能研から4教科のパターンの表が配布されます。
日能研から配布された表を参考にすれば、出題傾向が似ているかどうかは、すぐに分かります。
ファイナル256はこんな人にはお勧めしません
ファイナル256の受験をお勧めしないのは、全範囲での力試しをしたい方だけです。
ファイナル256は、出題範囲が限定されているので、入試のように全範囲での力試しはできません。
全範囲での力試しをしたい場合には、ファイナル256を受験するよりも、過去問などを利用する方が効果的です。
過去問では飽きてしまう、やりつくしたという場合もあるでしょう。
また、年末年始は時間の余裕が少しはあるから、普段は解かない問題も解いてみたいという場合もあるでしょう。
新鮮味を求める場合は、ファイナル256でも過去問でもなく、銀本こと『中学入学試験問題集』という教材をお勧めします。
受験しない学校の問題に取り組むことで、全範囲での力試しをすることができます。
ちなみに、銀本の使い方についてはこちらをご覧ください。
まとめ
ファイナル256とは、年末年始の頃に日能研で行われる、6年生だけを対象にした模試です。
一般的な模試とは異なり、ファイナル256には、以下のような特徴があります。
- 問題のパターンを選べる(256パターン)
- 偏差値が出ない
- 出題範囲が限定されている
そのため、ファイナル256を受験することには、以下のようなメリットがあります。
- 他の塾でテストがない時期
- 範囲の指定
- 志望校に近い形式
- ファイナルシート
一方、ファイナル256を受験することには、以下のようなデメリットがあります。
- 範囲の指定
- 他の受験者との比較がしにくい
- 勉強時間が奪われる
- 出題形式が偏る
範囲の指定などは、人によってはメリットになる場合もあれば、デメリットになる場合もあるということです。
以上を踏まえて、以下のような場合には、ファイナル256の受験をお勧めします。
- 分野別に穴を探したい
- 受験までのペースメーカーにしたい
- 併願校や受験を迷っている学校の出題形式が第一志望と似ている
ただし、全範囲での力試しをしたい場合には、ファイナル256の受験をお勧めしません。
年末年始は、入試に向けた貴重な時間ですから、有意義に使って本番に向けて調整していきましょう。
なお、ファイナル256の出題範囲や日程などの最新情報は日能研のファイナル256のページでご確認ください。
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